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特許法の改正案2011年8月

日本国特許法改正案2011年6月8日公布 来年6月8日までに施行

10項目近くの改正項目のうち、最も重要と思われるのは、今回「104条の4」として新設される「再審事由の制限」です。特許侵害訴訟の判決が確定してしまえば、その後に特許無効審決が確定しても、改正法施行日以後の再審の訴えにおいて、そのことを根拠に確定判決の取消しを主張することができないということです。それゆえ、損害賠償を命じた確定判決が特許の無効が確定したからといって再審により取り消されることはありません。支払い済みの賠償金も返還され得ません。無効審決の確定により、確定判決による差止命令は、第三者との公平の観点からも、解除されるべきでしょう。

特許の有効性に余程の疑義がない限り、裁判所は、後顧の憂いなく審理を急ぎ早期に判決できることとなるでしょうから、侵害を疑われた当事者は、可能な限り特許無効審判を早く起こし、早期の審決の確定を期すべきでしょう。

他に、現行法では、例えば、特許無効審決に対し特許権者がその審決の取消訴訟を提起したときには、その提起した日から90日以内に訂正審判を請求できますが、今回の改正法ではこれが廃止されます。特許権者は、無効審判において相手側からの攻撃に対し特許の権利範囲を堅持すべく、ぎりぎりの防御を試み、最悪、審決が出て後の取消訴訟提起90日間の訂正審判請求の機会に賭けるということが出来ます。しかし改正法では、それが出来なくなりますが、審決の前に審決予告が出、その予告に応じた訂正請求が出来ますので、特許権者は予告を待って対処することが可能です。ゆえに、特許権者側の戦略に変更はなさそうです。むしろ、訴訟提起と、その後に発生する無駄な手続きが省略されることになり、両当事者の負担が軽くなるという意味でも歓迎すべき改正です。

山本秀策

本稿に記載の見解は私の現時点での個人的見解であり、当事務所の過去・現在・将来のいづれの時点での見解でもありません。

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