山本特許法律事務所

SHUSAKU・YAMAMOTO

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Myriad 事件の米国最高裁判決2013年6月

「遺伝子は自然産物であって、それを取り出したというだけでは特許の対象にはならない。ただし、cDNAは自然産物ではないから特許対象。」との認定。

上記認定以外に格別の意思が表明されていないため、この射程がどこまで及ぶのかは今後の個々の具体的事件を待つしかありません。

ところで、「自然産物」か「非自然産物」かで特許適格の有無が認定されています。cDNAは人工物ゆえに特許適格ありとのことですが、現実の創薬医療分野では更にその川下にこそ利用価値があるのです。であれば、例えば、自然産物のDNAから得られる蛋白質がそれと同じ蛋白情報を持つはずの人工物cDNAから得られる蛋白質とは、糖鎖がわずかに異なるだけで機能が同一とすれば共に自然産物との認定もあり得ることになります。そうであれば、川上のcDNAに特許適格があってもその川下産物である蛋白質には特許適格が無いということにもなり得ます。

ということは、DNAとcDNAとを特許適格性で区分けすることに現実問題としてどれ程の意味があるのでしょうか。

懸念されている遺伝子探索のインセンティブの低下ですが、その川下産物には今後益々有用性が明らかにされてゆくはずであることから、そのインセンティブは増大することはあっても減退することはないと思われます。

いづれにしましても、遺伝子についての研究成果の特許化をどの段階で始めどのように権利化すべきかなど、特許戦略知財戦略はこれまで以上に重要になることでしょう。

山本秀策

本稿に記載の見解は私の現時点での個人的見解であり、当事務所の過去・現在・将来のいづれの時点での見解でもありません。

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