世界の知財トレンド

Bilski事件2010年10月

米国最高裁判決2010年6月8日

「ビジネス・メソッド」(日本では、一般に「ビジネス・モデル」と称される。)の特許性が最高裁で初めて判断される事件であるということで注目されていました。その結論は、ビジネス・メソッドの特許性を排除しなかったということです。

米国特許法101条には、特許として保護すべき対象が明記されています。プロセス、機械、製造、組成物の4つのカテゴリーです。

メソッドは方法ということからプロセスのカテゴリーに入り、本来は特許の対象となるものの、「抽象的概念」、「自然法則」および「数学的アルゴリズム」は特許法101条でいう特許の対象から除外されるという従来からの最高裁の判例を考慮し、今回のビジネス・メソッドは、「リスクヘッジという概念は抽象的概念である」との理由から、特許性がないと認定し、連邦知財高裁判決を支持しました。

しかしながら、ここで大切なことは、Bilskiが特許庁による特許性なしとの判断に不服で控訴した知財高裁が認定した特許法101条の保護対象の判断基準―「“特定の機械に関連しているか、または特定の対象物を異なる状態もしくは異なる物に変換させる”プロセス」は特許の保護対象になるという判断基準―がプロセスの特許性を判断する唯一の手段ではないと、最高裁が今回判断したということです。

つまり、機械(ハードウェア)が関与しない純粋なソフトウェアのプロセスを特許の保護対象から完全に排除する判決ではないということです。情報化時代にあって、保護対象を無やみに狭くすべきではないとの立場を最高裁が採ったということです。

実務への影響は、例えば、ビジネスメソッドの特許性が「機械もしくは対象の変換」基準に必ずしも拘束されないということですから、特許出願明細書の作成がより容易かつ広範囲に可能となります。侵害事件では、侵害に対する防御に際して101条による特許無効の主張が必ずしも威力を発揮することにならなくなった分、特許権者からの攻撃に対する防御側には工夫が必要ということになります。

山本秀策

本稿に記載の見解は私の現時点での個人的見解であり、当事務所の過去・現在・将来のいづれの時点での見解でもありません。

目次に戻る