海外案件を国内で権利化する業務を行っています。
現在、海外(主に米国)のクライアントの案件について日本国内で権利化を図るという仕事をメインで行っております。日本の特許庁から「このままでは権利にできない」という通知を受けたときに、できるだけ広い権利範囲を保ちつつ、特許を成立させていくために具体的にどのような対策を採るべきかを海外のクライアントに提案します。その際、特許権の権利範囲を決める「クレーム」をどのように作成するか、それがおもしろいところです。「クレーム」とは「私が主張する権利範囲はここからここまでですよ、という範囲を言葉で表現したもの」です。ですので、同じ発明であってもクレームの作り方によって「広い範囲」になったり「狭い範囲」になったりするわけです。まさに弁理士としての腕の見せ所といえます。自分が提案したクレームで特許が成立してお客さまから「エクセレント!」といってもらえた時にはやりがいを感じますね。
「クレーム表現」と「論理」を武器に戦えるという実感。
「一番嬉しかったこと」は、「これは大塩の専門の技術分野ではないかもしれないが大塩に託したい」と言って頂けたことです。私は大学では数学を専攻していましたので、厳密な意味では工学的なバックグラウンドを持っていないんですね。かなり大胆な発言をすると、あまり「技術」そのものには興味がないんです。「ローテク」よりは「ハイテク」の方がおもしろいかという程度です。どのような「技術」でも、それをどのようにして「権利」にするか、そこに興味があります。そのために「クレーム表現」と「論理」を磨くことに拘ってきました。かなり昔のことになりますが、「クレーム表現」で細かいところが気になって仕方なく「こんなに細かいところがいちいち気になってやっていけるのだろうか」と悩んでいた時期がありました。そのころ特許庁の審判官に面談でクレームの内容を説明する機会があったのですが、審判官がクレーム表現の本当に細かいところを質問してくるのです。それで「ああ、それでいいんだ」とふっきれた思い出があります。「論理」といえば、最近の無効審判や訴訟の仕事を思い起こします。特許庁のベテラン審判官や裁判所の裁判官を納得させるのは並大抵のことではありません。納得してもらうには、「論理」と「証拠」これに尽きます。
セルフコントロールが仕事の鍵。
入所してから、ずっと、電子情報グループに所属していますが、メインの仕事は変遷してきています。最初は、(1)日本のクライアントの案件を海外で権利化を図る仕事、次に、(2)日本のクライアントの案件を日本で権利化を図る仕事、そして、(3)海外のクライアントの案件を日本で権利化する仕事、です。(1)で優秀な米国代理人の仕事ぶりをまのあたりにしてどのように米国特許庁に応答すればどのように権利になるのかと実感できたことは大きな収穫でした。(2)で日本の審査官と実際にやりとりをして審査官のものの見方・考え方を学ぶことができたことは大きな収穫でした。(3)で英語と日本語を表裏一体に駆使する仕事は、大変ですがやりがいがある仕事です。(3)での仕事は、(1)、(2)で培ってきたことがベースになっています。長く続けてこられたのは、セルフコントロールができることが大きいと思います。仕事のやりがいと大変さは比例するので、寸暇を惜しんで仕事をすることになります。それがプロというものだと思っているからです。けれども、ある日突然折れてしまってはどうしようもない。鬼のように仕事もするけど休むときはしっかり休む。仕事も一生懸命だけど遊びも一生懸命。オンオフをきちんと区別するということでしょうか。
常に前向きな方、大歓迎です。
当所で働くということは、この道の専門家をめざすということです。野球でいえば社会人野球でもなく日本のプロ野球でもなくメジャーをめざすということです。大変さのない仕事にやりがいはないし、責任のない仕事にもやりがいはないということをしっかりと自覚して、日々の訓練を怠らず、「大変さ」と「責任の重さ」にひるまず常に前向きにチャレンジしていく人と一緒に仕事がしたいですね。
2013年4月 掲載